5分で読めるUAF紹介(3):ストラテジックビュー

皆さんこんにちは!

前回までで、UAFの概要と、ケーパビリティを例に取りドメインメタモデルの概略を説明しました。今回からは具体的にUAF(Unified Architecture Framework)で定義されているビューポイントについて紹介していきます。初めは、ビューポイントの中で中心的な役割を担うストラテジックビューポイントを見ていきましょう。

ストラテジックビューポイントは、名前の通り、エンタープライズアーキテクチャを考える上で、戦略などの上位レベルでの検討をするところです。ここで、戦略とはどのようなものでしょう。UAFでは、それを、前回の記事でも紹介した「ケーパビリティ」というものを中心に考えます。ストラテジックビューポイントでは、いくつかのビュー仕様(UAFグリッドの一つのセルをビュー仕様と呼びます)が用意されています。

  • Strategic Motivation(ストラテジーの動機)
  • Strategic Taxonomy(ストラテジーの語彙)
  • Strategic Structure(ストラテジーの構造)
  • Strategic Connectivity(ストラテジーの接続性)
  • Strategic Process(ストラテジーのプロセス)
  • Strategic States(ストラテジーの状態)
  • Strategic Information(ストラテジーの情報)
  • Strategic Roadmap(ストラテジーのロードマップ)
  • Strategic Traceability(ストラテジーのトレーサビリティ)

Strategic Structure(ストラテジーの構造)

このなかで、例えば前回も紹介した、下のケーパビリティの構成を表すモデル図は、Strategic Structure(ストラテジーの構造)において定義されるものです。

それでは、他のビュー仕様は何を記述するところでしょうか。

Strategic Taxonomy(ストラテジーの語彙)

まず、Strategic Taxonomy(ストラテジーの語彙)は、ケーパビリティの語彙を定義しているところです。

この例では,それぞれの語彙の説明をノートで記していますが,なくても構いません。構造と語彙の定義を二つに分けるのはまどろっこしく感じるかもしれませんが、ストラテジーの語彙は「どのようなケーパビリティがあるのか」という関心事のためのビュー仕様で、ストラテジーの構造は「ケーパビリティ間の階層構造はどうなっているのか」という関心事に応えるものです。同じブロック定義図でも、まず関心事があり、それを過不足なく最も適切に表現しているモデルが記述されるようになっています。次に,上に示したようなケーパビリティが必要になった背景を説明するビュー仕様を見ていきましょう。

Strategic Motivation(ストラテジーの動機)

ここでは、ケーパビリティが導出された背景やその根拠について定義します。例えば、UAFでは、ケーパビリティの他に、ドライバー(Driver)、チャレンジ(Challenge)、オポチュニティ(Opportunity)という概念が規定され、さらにそれらの間の関係についてもいくつか定義されています。これらの概念はエンタープライズシステムズエンジニアリングで使われる概念で、ケーパビリティが導出される背景をモデルとして記述できるようになります。森林火災対応システムでは、例えば次のように書けます。

ドライバーは、そのエンタープライズシステムを作ることになった要因、チャレンジは、それら要因を考慮した際に、解決しなければならない課題、オポチュニティは、その課題を解決するために貢献するなんらかの機会、というように理解しておくとよいと思います。これらの概念とケーパビリティとの関係を記述しておくことによって、ケーパビリティの妥当性などの判断の材料になりうるものです。例えば,上の例では,「全国的に森林火災が頻発している」という事象が,今回のエンタープライズシステムを作ることのきっかけとなっていることを「ドライバー」であることで表現しています。この「全国的に森林火災が頻発している」という事象における課題としては「なるべく初期段階での対応開始」がありうるとここでは書いています。この妥当性はおいておいて,これが解決すべき課題であるという合意がされたことが記録されているということが重要です。さらに,それの解決に貢献する機会として,「迅速な消防活動」がありうることが記されています。次に,これらの動機とケーパビリティとの関係のモデルを見てみましょう。

ここでは,前の図で導入されたオポチュニティが再度現れて,ケーパビリティとの関係が記述されています。このような関係を記述することにより,ケーパビリティの必要性や十分性の検討ができるようになります。

上に示したように,ストラテジービューだけでもたくさんのビュー仕様が含まれていますので,今回の説明はここまでにします。エンタープライズアーキテクチャは記述のためには多くの観点が必要になるため,UAFではそれらが混じらないように,一つのビュー仕様ではなるべく限定した関心事のみを表現するようになっています。関心事を限定することにより,アーキテクチャ記述担当者の属人性をなるべく少なくして,UAFを知っていさえすれば,どこに何が書いてあるのか瞬時に分かるようになっています。

皆様いかがでしたか。次回もお楽しみに!

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