5分で読めるUAF紹介:ケーパビリティ

皆さんこんにちは!

今回は、以前に紹介したUAFについて、その中身を紹介する第一回目です。前回、UAFは主に次の二つが提供されていると書きました。

  1. ビューポイントの定義
  2. ドメインメタモデルの定義

このなかで今回はドメインメタモデルがどのようなものか説明します。

UAFのドメインメタモデルは、エンタープライズアーキテクチャを構築する際に必要となる概念を整理し、定義したものです。今回は代表的な「ケーパビリティ」という概念を見ていきましょう。次のように定義されています。

ケーパビリティ(Capability):方法や手段(例えば、ケーパビリティコンフィグレーション)を組み合わせることにより、望ましい効果を実現することを達成するためのエンタープライズの能力であり、特定された測定値とともに利用される。

一言でいうと、対象としているエンタープライズシステムがもつ能力のことです。能力というと分かりにくいかもしれませんが、システムでいうところの機能のようなものと理解しておけば大丈夫です。方法や手段の例として挙げられている「ケーパビリティコンフィグレーション」もUAFのドメインメタモデルで定義される概念ですが、ここではあまり気にする必要はありません。ケーパビリティ自体は、方法や手段には依存しないことを言っています。また、ケーパビリティは「特定された測定値」とともに利用されるとあるのは、定量的な指標も対応付けられることをいっています。UAFのドメインメタモデルでは、文章による定義だけでなく、次のようなクラス図による定義も含まれています。

(Unified Architecture Framework(UAF) Domain Metamodel Version1.2から引用)

ここでは詳しく説明しませんが、ケーパビリティの特性が、例えば「PropertySet」などの抽象概念で定義されていることもあるので、UAFを本格的に使う場合には、これらの定義に戻って確認する必要もあるかと思います。

それでは、ケーパビリティの具体例を見ていきましょう。ここでは、エンタープライズシステムの例として、仮想の「森林火災対応システム」を考えていきましょう。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、海外では森林火災が大きな問題になっているところもあります。一方で、ドローンや地上無人機など、従来型のヘリコプターによる空中消火や通常の消防車だけでなく、さまざまなソリューションの可能性が増えてきてもいます。それらを戦略レベルの目的に対して、効果的に組み合わせて対応しなければならないため、エンタープライズアーキテクチャが必要な対象といえます。

文献[1] に現れる森林火災対応システムのケーパビリティの構成は次のようなものです。

この図はSysMLのブロック定義図で記述されていて、それぞれの要素はブロックですが、それぞれ«Capability»というステレオタイプが付加されており、これらがケーパビリティであることを表しています。ここではケーパビリティは階層的に定義されており、まずケーパビリティ全体を表すケーパビリティとして「森林火災対応」が定義されています。この全体を表すケーパビリティは、のちのち必要になることもあるものですが、はじめはなくても大丈夫です(例えばエンタープライズシステムの進化に応じて、ケーパビリティセットも進化していくような場合に、全体で求められるケーパビリティセットと、それに対応するソリューションの構成をモデル上で対応付けたい場合などに使われます)。次のレベルに「火災予防」「火災鎮圧」「ミッションマネジメント」という三つが定義されています。これは、森林火災対応というエンタープライズシステムの能力は、この三つに大きく分けられることを表現しています。この中でさらに、「火災鎮圧」がいくつかのケーパビリティに分かれていて、この中に「火災消火」があり、これが森林火災の火を消すことができる能力です。このようにモデルで記述することにより、例えば人によって「消火」と一言でいっても、それが単に火を消すことだけを言っているのか、火災を検知したり予測したりすることまで含んでいるのか、といった認識の齟齬を減らすことができます。

このように記述されたケーパビリティは、次のような活動の中で参照されたり修正されたりしながら使われていきます。

  • それらがミッションやビジネスに対して十分であるのか検証する
  • ソリューションがこれらのケーパビリティをすべて達成しているのかレビューする
  • 各ケーパビリティに対して、その達成の基準を定量的に定義する

このように、エンタープライズアーキテクチャの中ではケーパビリティが中心的な役割を担っています。それでは次回はケーパビリティを定義するビューポイントであるストラテジックビューポイントを紹介します。

ではでは皆さんお楽しみに!

参考文献

[1] Lalitha Abhaya: UAF (Unified Architecture Framework) Based MBSE (UBM) Method to build a System of Systems Model, Presentation Slides, 31th Annual INCOSE International Symposium, July, 2021.

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